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HDX導入事例:気鋭のエンジニア「Neerai Khajanchi(ニラジ カジャンチ)」のサウンドを支えるPro Tools|HDX

2013年4月29日

気鋭のエンジニア「Neerai Khajanchi(ニラジ カジャンチ)」のサウンドを支えるPro Tools|HDX

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Niraji_2634_bw Neeraj Khajanchi(ニラジ カジャンチ)氏といえば、マライア・キャリー、ボーイズⅡメン、ジャヒーム、ヨランダ・アダムス、ケリー・ローランド、セリーヌ・ディオン、ランディー・ジャクソン、ボビー・バレンティノ、ティンバランドなどの海外一流アーティストをはじめ、Ai、中川翔子、三浦大知、福原美穂、ゴスペラーズ、伊藤由奈、鈴木雅之などの国内アーティストまでを幅広く手掛ける今最も多忙なレコーディング&ミキシングエンジニアの一人です。

また、アーティストやクリエイターだけでなく同業のエンジニアからも信頼の厚い存在として、ニューヨーク、マイアミ、ラスベガス、日本など国内外と問わず世界各国の様々なシーンで活躍されています。都内レコーディング・スタジオにてミキシング作業中のNeeraj 氏を直撃し、自身のキャリアからPro Toolsとの関わりやサウンドワークの極意まで、幅広くインタビューを行いました。

エンジニアとしてのルーツは、学生時代のインターンにあり!  

Niraji_2669_bw 若くして数々のトップミュージシャンのレコーディングやミキシングを手がけられているNeeraj氏ですが、そのルーツはニューヨーク在住時代のインターンシップ(就職前の職業体験制度)による、ある音楽プロデューサーとの出会いがきっかけだったと語ります。

「当時は、なにか音楽関係の仕事をしたいとは考えていたのですが、具体的な目標は定まっていない状態でした。そんな時に、ビリー・ジョエル、フランク・シナトラ、レイ・チャールズ、クインシーン・ジョーンズなどのアーティストを手がけた大物音楽プロデューサー”フィル・ラモーン”の下で、インターンシップとしてアシスタントを体験する貴重な機会を得ました。一緒にお仕事をさせてもらう中で、彼から本格的にエンジニアリングについて学んだほうが良いとの強いススメをうけて、バークリー音大に進学することになったんです。実はその時に、初めてミキシングエンジニアという職業を具体的に意識しましたね。なお、在学中はトニー・ベネットの個人スタジオである”ベネットスタジオ”でアシスタントエンジニアをして腕を磨きました。」(Neeraj氏)

ヒット・ファクトリー時代から常にPro Toolsが仕事の相棒  

Niraji_2659_bw バークリー音大を卒業したNeeraj氏は、音楽好きなら一度は必ず耳にしたことがあるであろうニューヨークの有名スタジオ”ヒット・ファクトリー”でミキシングエンジニアとしての本格的なキャリアをスタートすることになったそうです。そんな同氏のサウンドワークには、当時から常にPro Toolsが欠かせない存在でした。

「2004年にニューヨークへ移住してからすぐ、幸運にも”ヒット・ファクトリー”でのアシスタントの仕事に就くことができたんです。軽い気持ちでスタジオにインタビューしに訪れたら当日からアシスタントになっていました(笑)。スタジオでは、レコーダーとしてPro Toolsが当たり前にように利用されていましたし、すでにアナログテープについては、エフェクトやアウトボード的な使い方はしても、本格的にレコーディングに使用することはなくなっていた時代。それからの僕のエンジニアとしてのキャリアは、常にPro Toolsと共にあるといっても過言ではありませんね!  

その後は、アシスタントとして半年間程度キャリアを積んだのですが、当時のヒット・ファクトリーは、ほとんどがSSLのコンソールだったのですが、唯一導入されていたEuphonix(現Avid)のデジタルミキシングコンソール”System 5”を、僕が完璧にオペレーションできるようになったのを切っ掛けに、メインエンジニアとして仕事をさせてもらえるようになりました。そういった意味では、System 5にも感謝しています(笑)

ちなみに、最初のメインエンジニアとしての仕事は、レゲエ界の大物”エレファント・マン”のアルバム制作でした。」(Neeraj氏)

HDXなら音圧を稼ぎながら、自然なトランジェントも活かせる  

Niraji_2715_bw 「ヒット・ファクトリーでのハウスエンジニア時代から、Pro Tools(当時はバージョン6および888 I/O)を仕事に欠かせないツールとして使い続けているわけですが、今からちょうど5年くらい前に、どこにでも持ち運べる完全に自分だけのTDMセット(HD3システム)を組んで、仕事をするようになったんです。そのシステムを選定するときには、AvidだけでなくApogeeやLynxなど様々なメーカーのオーディオ・インターフェースを実際に試してサウンドの品質などを比較し、ApogeeのAD-16X/DA-16Xを採用すること最終的に決めました。今でもそうですが、個人的にApogeeのサウンドが好みであったという部分も大きいですね。  そして、半年前に”Pro Tools|HDX”に移行したのですが、その際にもオーディオ・インターフェースについては、他メーカーを含め比較検討を行った結果、Avidの新しい”HD I/O”を採用することにしました。圧倒的なダイナミックレンジやクリアなサウンドといった音質的な優位性はもちろん、自分が手がけるアーティストから求められることの多いサウンドのパワー感を一番感じられたのも、HD I/Oを選んだ大きな要因です。当初、TDM環境でミックスしていた曲をHDXで聞いてみると、なんだかとても気持ち悪い気がして、、、。これまで気づかなかったサウンドのディテール部分まで顕になるため、サウンドの劇的な変化に驚かされると同時に、Pro Tools|HDXベースでミックスをし直す必要性を強く感じさせられました。Pro Tools|HDXでは、リミッターなどで無理矢理に抑え込むのでなくヘッドルームを残しつつ音圧を稼ぐことができ、かつ自然なトランジェントを活かせるのが素晴らしいです!」(Neeraj氏)

AAXならDSPおよびNativeプラグインの違いを全く感じない  

Niraji_2650_bw_1 Pro Tools 10では、ワークフローをさらに効率化しプロフェッショナルを強力にサポートする数々の新機能が搭載され、ソフトウェアとしても大きく進化を遂げました。プラグインでは、あらたにAAX(Avid Audio eXtension)と呼ばれる最先端プラグイン・フォーマットが採用され、各デベロッパーによる開発も進んでいます。

Neeraj氏はその特長について、「AAXになってからは、DSPでもNativeでもまったくサウンド的な違いを感じることはなくなりました。最近では、音の印象が変化することはないので、ミックスなどの最中でも気軽にDSPとNativeのプラグインを切り替えて使っています。」と語ります。

「僕は、ほぼ全部のAAXのプラグインを持っていると思いますね(笑)。時間のある限り様々なプラグインを試していますが、最近の一押しは、FabFilterというメーカーのイコライザー”Pro-Q”でしょうか。そのほかAAXではないですが、WavesのChris Lord-Algeのシグネチャーシリーズや、Universal AudioのUADプラグイン”Neve 1073”や”Neve 1081”なども頻繁に使います。

さらに、プラグインといえば、自動遅延補正の範囲が大幅に拡張されたことと、AUXを使ってパラレルコンプを行った際に気になっていた位相の違和感が、Pro Tools|HDXになってからスッキリと解消されたのも個人的に非常に嬉しいポイントでした。大きなストレスだった部分が解消されたおかげで、より直感的にクリエイティブな作業のみ集中することができます。」(Neeraj氏)

クリップゲインは、ベストテイクを引き出すための便利機能  

Niraji_2696_bw 「Pro Tools 10の新機能の中では、”クリップゲイン”も頻繁に利用しています。ミックス作業時に用いられる機能といった印象をお持ちの方もいると思うのですが、実はレコーディング時にも非常に重宝する機能なんです。例えば、ボーカルなどのパンチインレコーディングを行う際に、前のテイクの音量やテンションが違って続きを歌いにくいなどという問題があった場合、従来ならフェーダーを手動で細かく調整したり、オートメーションを書いて対応する必要ありました。当然、わずかな時間とはいえ演者を待たせることになります。

一方、クリップゲインを使えば瞬時に音量を調整できますので、演者のモチベーションを容易に維持したまま快適にレコーディングを継続することが可能となり、必然的にOKテイクも出やすくなります。クリップゲインのおかげで、シンガーにもよく褒められるようになりました!(笑)  シンガーが気持よく歌えるように、モニターサウンドを瞬時に微調整してあげるなど、本当にちょっとしたことではあるのですが、そういった細かな配慮の積み重ねがより良いレコーディング結果を生み出すための秘訣であったりするわけです。

Pro Tools|HDXはじめとしたテクノロジーの進化により、手軽に高品位なサウンドを得られるようになったわけですが、パフォーマンスするのはあくまで人間です。僕自身も、現場では如何にしてミュージシャンとコミュニケーションし、リラックスした状態を維持してもらうか日頃から意識しています。スタジオ内に日常と変わらない自然な空気感さえ作りだせれば、自ずとベストな結果はついてくるものなのではないでしょうか。」(Neeraj氏)

Neerajさん ポロシャツとT-shirts:

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Neerajさん インタビュービデオ

I. エンジニアになるまで


YouTube: Khajanchi(ニラジ カジャンチ)Pro Tools|HDX ビデオ1 エンジニアになるまで

II. Pro Tools|HDXを使い始めて


YouTube: Khajanchi(ニラジ カジャンチ) Pro Tools|HDX ビデオ2  Pro Tools|HDXを使い始めて

※お話に出てくるD.O.I.氏のインタビューはこちら>>

III.  Pro Tool|HDXとPlugins


YouTube: Khajanchi(ニラジ カジャンチ) Pro Tools|HDX ビデオ3: Pro Tool|HDXとPlugins

IV. 僕の持ち運びシステムと活動


YouTube: ニラジ カジャンチ Pro Tools|HDX ビデオ4 僕の持ち運びシステムと活動

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